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泌尿器科診療-諸疾患の説明

諸疾患の説明

 

前立腺肥大症

40歳代後半以降の中高年に発症する良性疾患です。前立腺は男性特有の臓器で、精液の一部を分泌する役割があります。膀胱の下に位置して、その中を尿道が通るため、前立腺肥大によって尿道が圧迫されて排尿障害を生じます。

症状

排尿困難(出が悪い、勢いが弱い)、頻尿(とくに夜間)、残尿感、尿意切迫などがあり、病状が進むと尿閉(尿を出せない)、溢流性尿失禁(膀胱が張りすぎて尿が少しずつあふれ出る)、さらには腎機能障害に至ることもあります。
正常の前立腺サイズは20cc未満のクルミ大ですが、加齢とともに大きくなる人が増えてきます。30~50ccの鶏卵大から、100cc前後のリンゴ大まで肥大することがあります。しかし、前立腺の大きさと症状の強さは必ずしも一致せず、症状が無く残尿もなければ治療は必要とされません。また、肥大症が癌に変化することはありません。ただし肥大症と癌が混在することがしばしばあり、これを見逃さないことが泌尿器科医の大切な仕事のひとつです。

治療

第一選択とされているα1遮断薬、5α還元酵素阻害薬の経口投与によって、患者さんの多くで排尿は改善されます。頻尿や尿意切迫感が強い場合は、他の薬剤も併用されます。投薬治療で改善されない場合は、手術治療が必要となることもあります。

過活動膀胱

尿意切迫感を必須として、通常頻尿を伴う症状症候群です。尿意切迫感とは、「急に強く尿意を感じて我慢できない」状態を指します。頻尿は昼夜を問わず、昼夜ともに頻尿のこともあります。尿失禁は伴うこともあれば、伴わないこともあります。
種々の疾患が原因あるいは関連し、また原因が明らかでないことも少なくありません。原因となる疾患の治療によって、その疾患の他の症状と共に過活動膀胱の症状も改善されますが、いつまでも続くこともあります。いずれにしても、過活動膀胱の症状は不快であり、QOL(生活の質)を損ない、過活動膀胱の症状を直接改善する治療が必要となります。

治療

治療の第一歩は、原因疾患の検査とその治療になります。病歴の十分な聴取に始まり、検尿で血尿と尿感染の有無、残尿測定、腹部エコー検査で腎・膀胱・前立腺を評価します。
男性であれば前立腺肥大症、女性であれば骨盤臓器脱(POP)の有無が重要な点となります。原因疾患があれば、その治療が優先されます。
原因疾患が明らかでない場合、あるいは原因疾患がある場合でもその治療によって症状が改善されない時には、過活動膀胱治療薬が処方されます。
抗コリン薬とβ3受容体作動薬が有効です。但し、両薬剤ともに膀胱収縮機能を抑制するため特に男性において前立腺肥大症などによって残尿がある患者では注意が必要です。

前立腺癌

男性に発生する悪性腫瘍の中で最も頻度が高い癌です。40歳代では稀ですが、50歳代以降、高齢になるほど急激に発生率は高くなります。早期癌の段階では全く症状がありません。癌が大きくなり尿道を圧迫して排尿困難となった時は、すでにかなり進行していることが多いです。

診断

しかし、前立腺癌ではPSA(前立腺特異抗原)という極めて鋭敏な腫瘍マーカーによって、早期に発見することが可能です。50歳から年1回血中PSA検査の施行が推奨されています。家族(兄弟、父)に前立腺癌の方がいる場合は40歳から検査を始めるべきとも言われています。

PSAに関する詳しい解説は、「前立腺癌マーカーであるPSAとは」を見てください。
PSA高値によって癌が疑われる時、前立腺MRIを施行して、前立腺癌を疑う所見を認めた場合は前立腺生検によって診断を確定します。

治療
  1. 前立腺全摘除術。現在ではロボット支援腹腔鏡下手術が主流です。

  2. 放射線療法。従来の放射線療法を改良した強度変調放射線療法(IMRT)、組織内照射療法(小線源療法とも呼ばれる)、粒子線治療(陽子線、重粒子線)などがあります。

  3. )内分泌療法。前立腺癌には男性ホルモンを抑制することによって癌の活性が抑制され縮小する特殊な性質があり、注射および経口薬で治療するものです。以上の3つの選択肢があります。

癌組織の悪性度、前立腺周囲への浸潤度、遠隔転移の有無、そして患者さんの年齢、体力、合併疾患の有無などから適切な治療が選択されます。

膀胱癌

主たる症状は血尿です。膀胱癌での特徴は、「無症候性肉眼的血尿」であることが多いです。肉眼的血尿をきたす疾患は種々ありますが、膀胱癌以外ではその疾患による他の症状も通常伴います。

診断

5~10mm以上の大きさの癌であれば膀胱エコーで確認できます。尿細胞診を施行しますが、悪性度が高い癌であれば80%以上の陽性率ですが、悪性度が低い癌であれば40%未満の陽性率です。他に原因となる疾患が発見されない「肉眼的血尿」、特に「無症候性」であれば、早々に膀胱鏡検査を行うべきです。膀胱鏡では5mm未満の小さな癌でも確認できます。
膀胱癌が確認されたら、生検によって確定診断し、膀胱MRIで壁内への浸潤の有無を評価しますが、生検と治療および壁内浸潤評価を兼ねた内視鏡的手術を行うこともあります。

治療

手術治療が必要です。膀胱癌は血尿を呈するため早期に発見されることが大半であり、多くは内視鏡的膀胱癌切除術(TUR-BT)が施行されます。膀胱の筋層に浸潤している癌では一般に膀胱全摘除術が必要となります。
TUR-BT後に再発率が高いことも本疾患の特徴です。40~50%の患者さんで再発がみられ、術後は定期的な膀胱鏡検査が必要となります。何度も再発することが多く、その都度TUR-BTが繰り返されます。

性感染症(尿道炎)

性感染症としての尿道炎には淋菌性尿道炎とクラミジア性尿道炎、もうひとつ非淋菌性非クラミジア性尿道炎があり、各々1/3位の頻度です。
前2者は、性交だけでなくオーラルセックスでも感染し、いずれも咽頭炎を発症することがあります。また両者は、男女とも不妊の原因となることがあり、放置せず確実な治療が必要です。非淋菌性非クラミジア性尿道炎は多彩な原因微生物による総称であり、マイコプラズマという微生物が半数近くを占め、病態についてはまだ十分には解明されていません。

淋菌性尿道炎

症状

排尿痛と尿道からの膿分泌です。感染から発症までの潜伏期間は2~7日間。
1回の性行為による感染率は30%と言われている。

診断

尿道分泌液あるいは尿検体を染色して、多数の白血球とその白血球の細胞内に取り込められた特有の形をした淋菌の確認で診断されます。最近では同じ検体を用いてPCR法という遺伝子検査で診断されることが多い。クラミジア感染の合併率も20~30%あり、そのPCR検査を同時に行います。

治療

抗生剤であるセフトリアキソンの点滴を単回投与で治癒します。勿論、パートナーも婦人科で治療するよう強く勧めます。

クラミジア性尿道炎

症状

尿道の不快感、掻痒感。感染していても男性では30%、女性では70%が無症状です。潜伏期間は1~3週間と長い。

診断

検尿では軽度白血球増加を認めるのみで、尿のPCR検査で診断します。

治療

アジスロマイシン250mg4錠を単回服用。2週後に尿のPCR検査を行い、治癒を確認します。

梅毒

わが国では、過去に希少疾患であったものが、2013年以降急速に増加し続けています。
病原菌である梅毒トレポネーマは、オーラルセックスを含む性交渉時に粘膜や皮膚の微細な傷から侵入し、その後速やかに血行性に散布されて全身の臓器に急性・慢性の炎症を起こします。

病期と症状

感染から発症までの潜伏期間は通常1カ月前後です。

早期梅毒:感染から1年未満の活動性梅毒で、性的接触での感染力が強い。

第1期と第2期に分類される。

第1期(感染後3週~3カ月)

梅毒トレポネーマの侵入部位である口腔や陰部の粘膜・皮膚に、無痛性の小豆(あずき)大から小指頭大のビラン、潰瘍、硬結が発生。両側の鼠径部リンパ節腫脹を伴うことが多いです。
男性の場合、泌尿器科へ受診するのはこの時期が多いでしょう。
治療なしで放置した場合、第1期の病変は2~3週で自然消退しますが、治癒したわけではありません。その後4~10週後に第2期の病変が出現します。

第2期(感染後1カ月~1年)

全身に散布された梅毒トリポネーマによる二次病変です。体幹を中心に顔面、四肢に認められる淡紅色の梅毒性バラ疹、角質の厚い手掌・足底に生じる丘疹性梅毒疹はその典型です。第1期の病変と重なって出現することもあります。

後期梅毒

感染から1年以上経過した梅毒で、皮膚・粘膜病変は見られず、性的接触での感染力はありませんが、出産時の母子感染はこの時期でも起こりえます。症状は侵された臓器によって様々です。無症状のこともありますが、後述する梅毒検査で陽性であれば後期梅毒と診断され、活動性梅毒として治療が必要となります。

診断

血清梅毒反応で判断します。脂質抗原法(STS)とTP抗原法(TP抗体)、2種類の検査を同時に行います。前者は梅毒に特異的ではないが、梅毒で陽性化し、治療によって低下します。後者は梅毒に特異的であるが、治療後に梅毒トリポネーマが排除されても生涯にわたって陽性が持続するものです。

治療

経口ペニシリン薬を4週間投与が基本です。2022年からペニシリン徐放製剤の筋肉注射薬が保険診療で認可され、早期梅毒では単回、後期梅毒では1週間おきに3回行います。
治療効果は、血清梅毒検査を再検して治療前の値と比較して判断します。

尿路結石症

結石が存在する場所によって、腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石と呼ばれます。
結石は腎臓で発生し、腎結石では通常症状はありませんが、尿の流れに沿って腎臓から細い尿管への移行部、さらに下の尿管へ結石が移動してそこで詰まって尿の流れを止めた時、急に腎臓が張れて水腎症となり、特徴的な左右どちらかの急激な強い腰部あるいは側腹部痛(疝痛発作)と血尿を生じます。反射的に消化管の動きが鈍くなって嘔吐を伴うことも多いです。

尿管結石

診断

腹部エコーで患側の水腎症を認め、腹部単純X線撮影で結石を確認して診断されます。ただし、X線撮影では結石が小さくて分からない場合や、結石成分が尿酸の場合はX線撮影で描出されないため、腹部CT検査で診断します。

治療

鎮痛と排石目的を兼ねて副交感神経遮断薬を処方し、疝痛発作時の頓用として強力な鎮痛剤である座薬または内服薬も合わせて処方します。
結石サイズが5mm未満では自然排石が期待され、10mm以上では自然排石が困難であり手術的治療が考慮されます。5mm以上10mm未満は境界型とばれ、まずは保存的治療を行いますが、自然排石困難と判断した時や患者の希望によって手術的治療となることもあります。手術治療としては体外衝撃波結石破砕術(ESWL)あるいは尿管鏡下でのレーザー砕石術があります。

膀胱結石

前立腺肥大症や神経因性膀胱などで排尿障害がある患者で認められることが多く、膀胱で発生した結石と考えられます。小さな結石が多数あることもあり、ピンポン玉くらいに大きくなった結石もあります。症状は、結石による尿線中絶、排尿痛、血尿、および膀胱炎の合併による症状となります。
内視鏡的結石摘除術とともに原因疾患の治療も必要です。

尿道結石

尿管から膀胱に落ちてきた結石は、尿道の内腔は尿管に比して十分広いので、通常容易に尿とともに排出されますが、大き目の結石で表面がギザギザしている場合、尿道で引っかかる時があります。排尿圧で結石を押し出す方法を試みてもらいますが、それでも結石が出ない場合は内視鏡的結石摘除術が必要です

​血尿

全ての尿路疾患で血尿があっても不思議ではありません。血尿とは尿の通り道である尿路(腎盂、尿管、膀胱、尿道)粘膜のどこからか出血していることを示すものです。代表的な疾患は、結石、炎症、尿路上皮癌です。血尿以外の症状の有無によって症候性血尿と無症候性血尿とに分類されますが、症候性の場合その症状によって血尿の原因疾患や出血している部位は大体見当がつくものです。

診断へのアプローチ

まず十分な問診から始まります。とくに尿路結石や膀胱癌の既往、お薬手帳で抗血栓薬の有無は重要です。次に検尿で血尿を確認し、膿尿と細菌尿を認めれば炎症に由る血尿となりますが、続発性尿路感染症と呼ばれる前立腺肥大症による膀胱炎、結石による腎盂腎炎なども考慮されます。
初診時に尿検査の前に行う必須の検査として腹部超音波診断があります。腎結石、水腎症の有無、膀胱癌所見の有無、男性であれば前立腺腫大がないか、その他多くの情報が得られます。
血尿で一番心配されるのは膀胱癌です。膀胱癌の典型的な症状は無症候性肉眼的血尿であり、そうした患者さんでは膀胱鏡検査が必要となります。
以上の診断へのアプローチで診断はつくものですが、中には原因が分からない方もあり、軽度の血尿であっても念のため尿細胞診で癌細胞の有無を検査します。ある程度以上の血尿であれば腹部CT検査で精査することもあります。
健康診断などで発見される血尿は「チャンス血尿」と呼ばれ、通常微少な血尿でかつ無症候性です。「尿の異常(血尿、たんぱく尿など)/健診で指摘されましたか」で詳しく解説しています。

治療

血尿で貧血になることは稀です。血尿の原因疾患を治療すると、間もなく血尿も消失します。著しい血尿に「膀胱タンポナーデ」があり、原因は種々ですが、これは急ぎ対処しなければなりません。貧血も心配されますし、何よりも膀胱内で血液が固まり患者に強い苦痛を与えます。場合によっては入院治療が必要となります。

夜尿症

5歳を過ぎても1か月に1回以上の頻度で夜間睡眠中の尿失禁が3か月以上続くものを夜尿症と言います。7歳児における夜尿症の頻度は10%程度とされ、その後は年間15%ずつ自然に治って、成人に至るまでにほぼ全例が治癒すると考えられています。
しかし治療の介入により、自然経過に比べて治癒率が2~3倍も高くなります。小学校へ入学してまだ治らない場合は、治療の開始が望まれます。

原因

夜尿症は親の育て方や子どもの性格の問題ではありません。睡眠中に膀胱がいっぱいになっても、尿意で目をさますことができない覚醒障害、また睡眠中の膀胱の働きが未熟で、ある程度膀胱に尿が溜まると膀胱が勝手に収縮してしまう、いずれも成熟に向けた発達段階の障害が基礎にあり、これらに加えて夜間尿量が多い(夜間多尿)ことが重なって発生します。

生活習慣

とくに注意すべきことは、夕食以後睡眠までの水分および塩分を摂りすぎないことです。便秘と夜尿症の関連は強く指摘されており、便秘がある場合はその改善が望まれます。

治療

学会のガイドラインで勧める治療法は2つあります。ひとつは、ミニリンメルトという商品名の抗利尿ホルモン薬で水がなくても服用可能なOD錠です。寝る1時間前に服薬しますが、その2、3時間前から水分摂取量の厳密な制限が不可欠です。うっかり多く水分を摂った場合は服薬を中止とします。
もう1つは夜尿アラーム療法です。当院では行っていませんが、睡眠中に尿失禁があった場合に感知してブザーが鳴る器械を装着して寝るものです。ブザーが鳴って家族も目が覚める、本人が覚醒しない時は起こさないといけないなど、家族の強い意志が必要とされます。

ED(勃起不全)

EDとはErectile Dysfunctionの略で、日本語訳で勃起不全のことです。満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られない、あるいは勃起を維持できない状態です。世界中の成人男性の5~20%が中等度ないし完全EDであると報告されています。
その原因から、器質性、心因性、および両者の混合性に分類されます。
治療は原因となるリスクファクターの除去・改善が優先されますが、バイアグラが開発されて以来その投与が先行して行われることが多く、有効率も極めて高いです。

勃起のメカニズムとバイアグラの作用

性的興奮によって仙髄から出てゆく骨盤神経が刺激されて、その末梢につながる海綿体神経(勃起神経)から一酸化窒素(NO)が分泌されます。NOは情報伝達物質と呼ばれ、神経を含め生体内で様々な情報を伝えるものです。このNOが陰茎海綿体平滑筋細胞に作用して、ある酵素を介して細胞内のGTPと呼ばれる物質をcyclic GMP(cGMP)へ変換し、cGMPが海綿体平滑筋を弛緩させて、海綿体内の動脈血流を増加し勃起することになります。
海綿体平滑筋にはPDE5と呼ばれるcGMPを分解して勃起を鎮める酵素が豊富にあり、性的興奮が治まると速やかに勃起も消失します。バイアグラは、このPDE5を選択的に阻害する薬です。

治療

バイアグラを始めとしたPDE5阻害薬は、現在3種類が使用されています。それぞれの特徴と服用の仕方、共通した副作用、および自費診療であることを、「ED(勃起不全)バイアグラなどの服用方法/自費診療となります」で詳しく記載しています。

医療法人

三軒医院

 

泌尿器科・​皮膚科・透析診療

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0721-53-3870

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