泌尿器科診療-重点解説
前立腺癌マーカーである PSAとは
PSAは分子量34,000のセリンプロテアーゼ(蛋白融解酵素の一種)であり、前立腺上皮細胞で産生され、精液成分の一部として分泌される。精液の液状化に関与していると考えられています。
この蛋白は血中にも逸脱し、血清PSAの基準値は一般に4.0ng/mlです。この基準値を超えても必ずしも癌とは限らず、前立腺組織ボリュームが大きくなった良性の肥大症でもやや高値となり、4.0~10.0ng/mlはグレーゾーンと呼ばれ、癌の人も含まれるが癌でない人の方が多い範囲となります。このような軽度PSA高値から、どのように癌の患者さんを見つけるか、種々検討されてきましたが、決定的な方法はまだありません。
診断への道筋としては、基準値を超えた患者さんに前立腺MRI検査を施行して癌が強く疑われる所見がみられた時に、前立腺生検を施行して診断していくのが現状と思われます。
尿の異常(血尿、たんぱく尿など)/健診で指摘されましたか
学校や職場あるいは地域での健康診断で、血尿あるいは尿潜血陽性、また蛋白尿を指摘されて当院へ受診されることが多いです。そうした方々を我々は「チャンス血尿」「チャンス蛋白尿」と呼んでいます。
チャンス血尿
排尿困難(出が悪い、勢いが弱い)、頻尿(とくに夜間)、残尿感、尿意切迫などがあり、病状が進むと尿閉(尿を出せない)、溢流性尿失禁(膀胱が張りすぎて尿が少しずつあふれ出る)、さらには腎機能障害に至ることもあります。
正常の前立腺サイズは20cc未満のクルミ大ですが、加齢とともに大きくなる人が増えてきます。30~50ccの鶏卵大から、100cc前後のリンゴ大まで肥大することがあります。しかし、前立腺の大きさと症状の強さは必ずしも一致せず、症状が無く残尿もなければ治療は必要とされません。また、肥大症が癌に変化することはありません。ただし肥大症と癌が混在することがしばしばあり、これを見逃さないことが泌尿器科医の大切な仕事のひとつです。
泌尿器科的血尿か内科的血尿か
チャンス血尿を診察するポイントは、十分な病歴聴取は勿論として、本当に血尿か、次に泌尿器科的疾患による血尿か、内科的腎疾患による血尿かの鑑別です。初診時には、検尿、腹部エコーで腎・膀胱・(男性では)前立腺を観察、成人では膀胱癌を疑い念のために尿細胞診を行い、血液検査が未施行の方では腎機能を含めた一般血液検査、小児や思春期の方では内科的腎疾患を疑い血中IgA、血清補体(C3)検査も行います。
血尿には糸球体性血尿と非糸球体性血尿があり、前者は腎臓の異常な糸球体基底膜を血液中の赤血球が通って形が不整になったものと考えられ、内科的腎疾患の存在を示唆します。後者は、尿の通り道である尿路(腎盂、尿管、膀胱、尿道)内腔の粘膜からの出血に由来し、泌尿器科的疾患である結石や炎症、また癌によっても出現するものです。糸球体性血尿と非糸球体血尿は、当院で設置されているフローサイトメトリー法を用いた尿中有形成分分析装置で鑑別され検査結果に表示さ れます。
病的な血尿とは限らない
チャンス血尿は通常微少な血尿で、正確な頻度は分かりませんが、大半は泌尿器科的かつ内科的にも原因となる疾患は見つかりません。しかし、中には重要な疾患を発見することもあり受診して一通りの検査の施行をお勧めします。
チャンスたんぱく尿
蛋白尿は将来腎不全となる重篤な腎疾患の可能性を示す指標です。小児から壮年期の若い方の中等度以上の蛋白尿では腎炎が疑われ、泌尿器科的疾患がないことを確認したうえ腎臓専門医への紹介が必要とされます。中高年以降の方では、糖尿病、高血圧や動脈硬化による腎硬化症など基礎疾患がないか、血液検査で腎機能を評価し、慢性腎臓病(末期腎不全へ至る前段階)であればその進行を抑えるための治療が必要です。
起立性蛋白尿/運動後蛋白尿
小児、思春期でみられる起立性蛋白尿、青年・壮年期でみられる運動後蛋白尿は病的なものでなく慢性腎臓病へ発展することはありません。その診断は、夜寝る前に排尿し、夜眠っている間(すなわち安静時)に膀胱内にたまった尿すなわち朝一番の尿を採取して、この尿と活動時の尿の蛋白を比較し、前者で陰性、後者で陽性によって診断されます。
ED(勃起不全) バイアグラなどの服用方法/自費診療となります
PDE5阻害薬の服用方法
バイアグラの発売以降、他の2種類のPDE5阻害薬も現在日本で使用され ています。
以下に各々の特徴を示しました。シアリス(タダラフィル)は食事の影響がなく、長時間効果が持続するため服薬のタイミングに制限がなく使いやすいかと思います。レビトラは現在製造されておらず、同じ成分の後発品のみが使用されています。
DPE5阻害薬は、服用すれば勃起するものでなく、性的な刺激や興奮があって効果が発現するものです。

PDE5阻害薬の副作用
狭心症治療に用いられるニトログリセリン剤の併用は禁忌です。バイアグラの使用が始まった時、米国では両者の併用で多くの方が亡くなっています。服用されたニトログリセリは体内で代謝されてNOが発生し、NOの作用で冠動脈も含めて全身の血管が弛緩して血圧がやや低下します。これにPDE5阻害薬が加わると相乗効果でショック状態となるためです。このほか抗不整脈薬の一部も禁忌とされています。
使用するPDE5阻害薬にもよりますが高齢者、腎機能障害、肝機能障害のあるひとでは少量からの開始や最大使用量に制限があります。
一般的な副作用では頭痛、ほてりが5~10%あります。いずれも軽度で一過性です。
ED治療は保険適応外
EDの投薬治療は自費診療となります。当院で扱っているPDE5阻害薬の値段は以下の通りです。

偽造PDE5阻害薬に注意
ウェブサイトを通じて購入したPDE5阻害薬には偽造薬が含まれていることがあります。2008~2009年の調査では、日本での購入で43.6%、タイでは67.8%が偽造薬でした。